CRC・CRA・SMAとは?仕事内容、違い、年収まで徹底解説!

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最終更新日:2025/07/29

CRC・CRA・SMAとは?仕事内容、違い、年収まで徹底解説!

日々の忙しい臨床現場で、ふと、自分のキャリアを見つめ直したことはありませんか?もし、あなたがそんな想いを少しでも抱いているなら、新しいキャリアの扉を開く鍵が「治験」という世界にあるかもしれません。 治験とは、新しい「くすり」を世に送り出すために不可欠な、未来の医療を創る仕事です。そしてこの業界では今、あなたの持つ看護師としての知識や経験が、喉から手が出るほど求められています。 この記事では、看護師からのキャリアチェンジ先として絶大な人気を誇る「治験」業界の主役、「CRC」「CRA」「SMA」という3つの専門職に焦点を当てます。それぞれの仕事内容から、働き方、求められるスキル、そして気になる年収の違いまで、あなたが抱えるであろう全ての疑問に答えるべく、徹底的に比較・解説していきます。 この記事を読み終える頃には、治験という仕事の全体像が鮮明になり、あなたに本当に合った新しいキャリアパスが、きっと見えてくるはずです。

目次

  • そもそも「治験」とは?

  • 治験業界を動かす3つの専門職【CRC・CRA・SMA】

  • CRC・CRA・SMAの仕事と働き方のリアル

  • 看護師から治験業界へ!キャリアチェンジのリアル

  • 治験業界への転職Q&A【未経験・年収・適性】

  • まとめ

そもそも「治験」とは?

「治験」という言葉は聞いたことがあっても、具体的に何をするのか、詳しくは知らないという方も多いかもしれません。

まずは、その基本から理解していきましょう。

治験の簡単な定義

治験とは、製薬会社が開発した新しい「くすりの候補」が、国(厚生労働省)から正式な「くすり」として承認されるために行う、最終段階の臨床試験のことです。

動物などでの試験で有効性や安全性が確かめられた後、実際に健康な人や患者さんの協力を得て、人における「効き目(有効性)」と「副作用(安全性)」を科学的に、そして慎重に確認するプロセスです。

治験の重要性

私たちが普段、当たり前のように使っている風邪薬や痛み止め、抗がん剤といった全ての医薬品は、この治験という、非常に厳しく管理されたプロセスをクリアしてきたものです。

多くの人々の協力と、専門家たちの努力の結晶が、今日の医療を支えています。

つまり、治験に関わる仕事は、未来の医療を創り、今まだ治療法のない病気で苦しむ人々を救う可能性を秘めた、非常に社会的意義の高い仕事なのです。

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治験業界を動かす3つの専門職【CRC・CRA・SMA】

この複雑な治験のプロセスは、様々な立場の専門家が密に連携することで成り立っています。

その中でも、特に中心的で、看護師などからの転職先として代表的なのが「CRC」「CRA」「SMA」という3つの専門職です。

それぞれの立ち位置と関係性を、まずは大まかに掴んでおきましょう。

CRC(治験コーディネーター)

CRCは、「病院側」の立場で、治験が実施される「医療機関」に常駐し、患者さん(被験者)と医師の間に入って、治験がスムーズに進むよう様々な調整を行う「現場の調整役」です。

CRA(臨床開発モニター)

CRAは、「製薬会社側」の立場で、担当する複数の「病院を訪問」し、治験が国の定めたルールや計画書通りに、正しく行われているかを外部からチェックする「監査役・監督役」です。

SMA(治験事務局担当者)

SMAは、「病院側」の立場で、病院内に設置された「治験事務局」に所属し、治験の開始から終了までに発生する膨大な事務手続きや書類管理を一手に引き受ける「バックオフィスの専門家」です。

CRC・CRA・SMAの仕事と働き方のリアル

それでは、3つの専門職の仕事を、より深く掘り下げていきましょう。

ここでは、それぞれの具体的な業務内容、求められるスキル、そしてキャリアパスまでを詳細に解説します。

CRC(治験コーディネーター)

CRCは、治験の最前線である医療機関において、治験全体が円滑に進むための「扇の要」となる存在です。

患者さんに最も近い立場で、その心に寄り添いながら、医師や院内スタッフ、製薬会社との橋渡し役を担います。

CRCの具体的な仕事内容

CRCの仕事は、治験のフェーズごとに多岐にわたります。


治験開始前には、まず製薬会社から提示された治験実施計画書(プロトコル)を深く読み込み、院内で治験をスムーズに行うための手順書を作成したり、関連する部署(検査科、薬剤部など)との調整を行ったりします。

治験実施中は、CRCの腕の見せ所です。

治験の条件に合う患者さんを探し(スクリーニング)、医師による治験内容の説明に同席。

専門用語をかみ砕いて説明を補助し、患者さんの疑問や不安に丁寧に対応することで、納得の上での同意(インフォームド・コンセント)をサポートします。

治験が始まると、患者さんの来院スケジュールを管理し、診察に同席。バイタルサインの測定や問診を行い、計画書通りの検査や投薬が行われているかを確認します。

そして、カルテの情報を基に、製薬会社へ報告するための症例報告書(CRF)の作成を補助します。

有害事象(予期せぬ副作用など)が発生した際には、迅速に医師に報告し、適切な対応をサポートすることも重要な役割です。

治験終了後も、全てのデータが正確に報告されているか最終チェックを行い、関連書類を整理・保管するなど、最後まで責任を持って業務を遂行します。

CRCに求められるスキルと、看護師経験の活かし方

CRCに最も求められるのは、相手の立場に立って物事を考え、円滑な関係を築くコミュニケーション能力です。

患者さんの不安を和らげる「傾聴力」、複雑な治験内容を分かりやすく伝える「説明力」、多忙な医師や他部署のスタッフに協力を仰ぐ「調整力」が不可欠です。

まさに、看護師経験はこの仕事で最大限に活かせます。

疾患や治療への知識はもちろん、患者さんのわずかな表情の変化や訴えから体調の変化を察知するアセスメント能力は、有害事象の早期発見に直結します。

多職種と連携してきた経験は、院内調整をスムーズに進める上で大きな武器となるでしょう。

CRCのやりがいとキャリアパス

最大のやりがいは、患者さんから直接「ありがとう」と言われる瞬間にあります。 

治験という未知の治療に不安を抱える患者さんに寄り添い、「あなたのおかげで安心して続けられた」と言われた時の喜びは、何物にも代えがたいものです。

一方で、様々な立場の人の板挟みになり、スケジュール調整に奔走する大変さもあります。


キャリアパスとしては、CRCの経験を積んでチームリーダーやマネージャーになる道、教育担当になる道、さらにはCRCの経験を活かしてCRAへ転職する道も開かれています。

CRA(臨床開発モニター)

CRAは、製薬会社やCRO(開発業務受託機関)に所属し、新薬開発プロジェクトの成否を左右する重要な役割を担います。

担当する治験薬が、科学的かつ倫理的に正しく評価され、一日でも早く承認されることを目指し、治験全体を監督・推進します。

CRAの具体的な仕事内容

CRAの仕事も、治験のフェーズによって異なります。


治験開始前には、まず治験を依頼するのにふさわしい医療機関や医師を選定し、訪問して協力を依頼します。

治験実施が決まれば、医師やCRCに対して治験内容の説明会を開き、治験がルール通りに開始できるようサポートします。

治験実施中が、CRAのメイン業務である「モニタリング」の期間です。

担当する複数の医療機関を定期的に訪問し、治験が国の定めた厳格なルール(GCP)や計画書通りに進んでいるかをチェックします。

その中心となるのがSDV(Source Data Verification)と呼ばれる作業です。

これは、患者さんのカルテなどの「元の記録」と、医師が作成した症例報告書(CRF)の内容が、一言一句違わずに正確に転記されているかを確認する、非常に地道で重要な作業です。

もし、計画書からの逸脱や記録の不備が見つかれば、その原因を究明し、医療機関側に改善や修正を依頼します。

訪問後は、その日の活動内容や確認事項を詳細にまとめた「モニタリング報告書」を作成します。

全国の医療機関を担当することも多く、月の半分近くを出張が占めることも珍しくありません。

CRAに求められるスキルと、看護師経験の活かし方

CRAには、物事を客観的かつ論理的に捉える思考力が不可欠です。

ルール(GCP)という絶対的な根拠に基づき、なぜ修正が必要なのかを医師に的確に伝え、納得してもらう交渉力やプレゼンテーション能力も求められます。

また、多くの出張や複数の案件を同時に管理するための、高い自己管理能力も必須です。

看護師の医療知識は、担当する疾患領域を深く理解し、医師と対等に話すための基盤となります。

カルテの読解能力も、SDVを効率的に進める上で直接役立ちます。

何よりも、臨床現場の多忙さや事情を理解していることは、医療機関との良好な関係を築く上で大きなアドバンテージとなるでしょう。

CRAのやりがいとキャリアパス

CRAのやりがいは、自分が担当した薬が国に承認され、多くの患者さんを救うという、スケールの大きな社会貢献を実感できる点にあります。

新薬の誕生という歴史的な瞬間に立ち会えるのは、CRAならではの醍醐味です。

その分、プロジェクトの遅延や失敗が許されないという重い責任も伴います。


キャリアパスは非常に多彩で、CRAとして経験を積んだ後は、チームをまとめるプロジェクトリーダーやマネージャー、後輩を育成するトレーナー、さらには外資系製薬会社への転職など、高収入と専門性を両立する道が広がっています。

SMA(治験事務局担当者)

SMAは、治験を実施する医療機関内に設置された「治験事務局」のメンバーとして、治験に関わる膨大な事務業務と管理業務を一手に引き受ける専門職です。

治験というプロジェクトがルールに則って、滞りなく進行するための屋台骨を支えます。

SMAの具体的な仕事内容

SMAの仕事は、大きく「委員会運営」と「文書・契約・金銭管理」に分けられます。


委員会運営サポートとは、治験の倫理性や科学性を審査する「治験審査委員会(IRB)」や「臨床研究審査委員会(CRB)」の事務局業務です。

委員会の年間スケジュールを管理し、審査に必要な資料を製薬会社や医師から取り寄せ、委員に配布します。

委員会当日は議事録を作成し、その後の保管・管理までを責任を持って行います。

文書・契約・金銭管理も重要な業務です。

治験を開始・実施・終了する上で作成・保管が義務付けられている「必須文書」と呼ばれる大量の書類を、ルールに従って正確にファイリング・保管します。

また、製薬会社と医療機関が結ぶ治験契約書の締結をサポートしたり、治験にかかる費用を算出して請求書を作成したりと、お金に関わる管理も行います。

SMAに求められるスキルと、看護師経験の活かし方

SMAに求められるのは、何よりも事務処理の正確性と、物事をコツコツと着実に進める力です。

文書の保管方法や委員会の運営手順は、全てGCPなどのルールで厳格に定められており、それに則って業務を遂行する几帳面さが不可欠です。

WordやExcel、PowerPointといった基本的なPCスキルも必須となります。

看護師の経験は、治験実施計画書や関連文書に書かれた医学的な内容を正確に理解できるという点で大いに役立ちます。

医師や製薬会社とのやり取りの中で、専門用語が飛び交う場面でも臆することなく、的確にコミュニケーションを取ることができます。

SMAのやりがいとキャリアパス

SMAのやりがいは、治験全体の質と信頼性を、自分の仕事が支えているという自負にあります。

一つひとつの業務は地道ですが、その積み重ねがなければ、質の高い治験は成り立ちません。

縁の下の力持ちとして、医療の発展に貢献している実感を得られるでしょう。


キャリアパスとしては、SMAとしての経験を積んで事務局のリーダーを目指す道や、治験に関する深い知識を活かしてCRCや、企業の品質管理部門などにキャリアチェンジする道も考えられます。

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看護師から治験業界へ!キャリアチェンジのリアル

治験業界への転職を考える上で、特に看護師の経験は非常に高く評価されます。

ここでは、その理由と、実際に転職した場合のメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。

治験業界で働く5つのメリット

看護師から治験業界へ転職することで、多くのメリットが期待できます。

第一に、ワークライフバランスの向上です。

基本的に夜勤がなく、土日祝休みのカレンダー通りの勤務となるため、プライベートの時間を確保しやすくなります。

第二に、高収入が期待できる点です。

特にCRAは、看護師時代よりも年収が大幅にアップするケースも少なくありません。

第三に、臨床とは異なるビジネススキルが身につくことです。

PCスキルやプレゼンテーション能力、ビジネスマナーなど、ポータブルなスキルを習得できます。

第四に、新薬開発という大きな社会貢献を実感できる、スケールの大きなやりがいがあります。

そして第五に、身体的な負担が少ないため、長期的なキャリアを築きやすいのも魅力です。

知っておくべき3つのデメリット(心構え)

一方で、キャリアチェンジにあたって心構えも必要です。

まず、採血や点滴、ケアといった、これまで磨いてきた臨床スキル(手技)を使う機会は完全になくなります

これに寂しさを感じる方もいるかもしれません。

また、デスクワークやPCでの資料作成といった業務の割合が格段に長くなります。

そして最も重要なのが、臨床とは異なるGCPなどの専門的なルールを常に学び続ける必要があるということです。

新しい知識を吸収し続ける意欲が求められます。

治験業界への転職Q&A【未経験・年収・適性】

最後に、転職を具体的に考える上で気になるであろう疑問に、Q&A形式でお答えします。

Q1. 未経験からでも本当に転職できますか?

A. はい、可能です。 

治験業界は、医療系の有資格者(看護師、薬剤師、臨床検査技師など)の「業界未経験者」を積極的に採用しています。

特にCRCは、臨床経験こそが最大の強みとなるため、未経験からスタートする方がほとんどです。

多くの企業で入社後に充実した研修制度が用意されているため、安心してキャリアを始めることができます。

Q2. 年収はどれくらい変わりますか?

A. 職種や企業によりますが、高水準が期待できます。

未経験からのスタートであっても、年収の目安は以下の通りです。

  • CRC / SMA:400万円 ~ 600万円

  • CRA:450万円 ~ 700万円以上

特にCRAは、経験を積むことで年収1,000万円を目指すことも可能な、非常に夢のある職種です。

看護師の平均年収と比較しても、その魅力は大きいと言えるでしょう。

Q3. どんな人が向いていますか?

A. あなたのタイプによって、向いている職種は異なります。

  • CRC向きなのは、 人とコミュニケーションを取るのが好きで、誰かの役に立ちたいという気持ちが強く、複数の業務を同時にこなすマルチタスクが得意な方です。

  • CRA向きなのは、 論理的に物事を考え、ルールに基づいて判断するのが得意で、全国への出張も楽しめるフットワークの軽い方です。

  • SMA向きなのは、 細かい作業をコツコツと正確に進めるのが好きで、バックオフィスからチームを支えることにやりがいを感じる方です。

看護・医療業界でご就業中の皆様今の年収、 今の働き方に満足してますか?あなたの理想の職場を
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まとめ

今回は、治験という仕事と、それを支えるCRC・CRA・SMAという3つの専門職について、詳しく解説してきました。

治験業界は、臨床現場とは違う形で「未来の医療」という大きな目標に貢献できる、やりがいと専門性に満ちたフィールドです。

患者さんに寄り添う「CRC」、プロジェクトを監督する「CRA」、事務で基盤を支える「SMA」。

あなたが進むべき道は、この中に見つかったでしょうか。

あなたが看護師として培ってきた知識、スキル、そして経験は、この新しい業界でこそ輝く「最高の武器」になるのです。

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