保健師とは?仕事内容から給料、なり方、看護師との違いまで徹底解説!

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最終更新日:2025/07/29

保健師とは?仕事内容から給料、なり方、看護師との違いまで徹底解説!

病院で患者さんの治療に日々奮闘する中で、あるいはこれから看護の道を歩もうとする中で、「もっと早い段階で、人々が病気にならないように関わることはできないだろうか」と感じたことはないでしょうか。 今回ご紹介する「保健師」は、まさにその想いを形にする専門家です。臨床現場での治療中心の看護とは一線を画し、「予防医療」と「公衆衛生」の視点から、地域や社会全体の健康を守るという、非常に大きな役割を担っています。安定した働き方と高い社会貢献性から、近年、看護師のネクストキャリアとしても大きな注目を集めています。 この記事では、「保健師って具体的にどんな仕事をするの?」「看護師とはどう違う?」「どこで働けるの?」「どうすればなれる?」といった、あなたのあらゆる疑問に、基礎から丁寧にお答えします。 この記事を最後まで読めば、保健師という働き方の全体像がクリアになり、あなたにとって目指すべきキャリアなのかどうかを、具体的に判断できるようになるはずです。

目次

  • 保健師とは?

  • 保健師と看護師の【決定的】な4つの違い

  • 保健師は3種類!種類別の仕事内容と活躍の場

  • 保健師になるには?資格取得までの3つのルート

  • 保健師の給料・年収の実態は?

  • 保健師として働くメリット・デメリット

  • 保健師の将来性とキャリアパス

  • まとめ

保健師とは?

まず、保健師という仕事の核心に迫っていきましょう。

保健師は、どのような役割を持つ専門職なのでしょうか。

保健師の法的定義

保健師は、「保健師助産師看護師法」という法律に基づき、厚生労働大臣から免許を与えられる国家資格です。

法律の第二条では、「『保健師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう」と定められています。

この「保健指導」こそが、保健師の専門性の核となるキーワードです。

看護師との最大の違いは「視点」

保健師と看護師の最大の違いは、物事を見る「視点」にあります。

病院で働く看護師は、病気や怪我を抱えた「個人(患者さん)」を対象に、その「治療」や回復をサポートすることに焦点を当てます。

一方、保健師は、地域に住む人々や企業で働く従業員といった「集団」を対象に、人々が病気になることを「予防」し、より健康な生活を送れるよう支援すること(健康増進)に焦点を当てます。

病気になってから関わるのが看護師、病気になる前から関わるのが保健師。

この根本的な視点の違いが、仕事内容や働き方の全てに影響してきます。

看護師資格が必須のダブルライセンス

助産師と同様に、保健師になるためには、まず看護師の国家資格を持っていることが絶対条件となります。

看護師として学んだ人体の構造や疾病に関する幅広い知識を基盤として、さらに公衆衛生や予防医学に関する専門教育を受けることで、初めて保健師への道が開かれます。

つまり、保健師は看護師資格と保健師資格の「ダブルライセンス」を持つ、高度な専門職なのです。

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保健師と看護師の【決定的】な4つの違い

保健師というキャリアをより深く理解するために、看護師との違いを4つの決定的なポイントに分けて、さらに詳しく見ていきましょう。

違い①:対象となる人

看護師が関わる対象は、病気や怪我を抱え、治療を必要としている「個人」、つまり「患者さん」です。

一人ひとりの病状や状態に合わせて、個別的なケアを提供します。

それに対して保健師が関わる対象は、より広く「集団」となります。

例えば、市町村の全住民、企業の全従業員、学校の全生徒などです。

その中には、健康な人はもちろん、病気のリスクを抱える人(予備群)、そして既に何らかの疾患を持つ人も含まれますが、アプローチの基本は常に集団全体を見据えています。

違い②:主な目的

看護師の主な目的は、医師の指示のもとで「治療」を補助し、患者さんの苦痛を和らげ、一日も早い回復を促すことです。

目の前の症状や疾患に対するアプローチが中心となります。

一方、保健師の主な目的は、人々が病気になることを未然に防ぐ「予防」と、今ある健康をさらに高める「健康増進」です。

健康的な生活習慣を普及させたり、社会の仕組みや環境そのものを健康的なものに変えていったりすることを目指します。

違い③:主な働き方

この目的の違いは、具体的な働き方にも大きく表れます。

看護師の仕事は、バイタルサインの測定や注射・点滴、身体の清拭や食事の介助など、直接的な医療処置やケアが中心です。

対して保健師の仕事は、健康に関する相談に乗る「健康相談」、家庭を訪問して状況を把握する「家庭訪問」、集団に対して知識を伝える「健康教育(セミナーや講演)」、地域の健康課題をデータから分析する「データ分析」、そしてそれらに基づく新しい健康事業を企画する「企画立案」など、多岐にわたります。

デスクワークや、様々な機関との連絡・調整業務の割合が高いのが特徴です。

違い④:勤務形態

働き方の違いは、勤務形態にも直結します。

24時間体制で患者さんのケアを行う病院勤務の看護師は、2交代制や3交代制といったシフト勤務が基本で、夜勤や土日祝日の出勤が伴います。

一方、保健師の勤務は、基本的に日中に行われます。

行政機関や企業に所属する場合が多いため、勤務時間は朝から夕方までの日勤で、土日祝日は休みという、いわゆる「カレンダー通り」の勤務がほとんどです。

この規則正しい働き方は、ワークライフバランスを重視する方にとって大きな魅力となっています。

保健師は3種類!種類別の仕事内容と活躍の場

「保健師」と一言でいっても、その活躍の場によって役割は大きく3つに分類されます。

ここでは、それぞれの保健師の仕事内容を詳しく見ていきましょう。

行政保健師

行政保健師は、市区町村の役所(健康増進課など)、保健所、保健センターといった行政機関に勤務する保健師で、地方公務員として働きます。

保健師の中で最も数が多く、一般的に「保健師」と聞いてイメージされるのがこの行政保健師です。

その仕事内容は、地域住民のあらゆるライフステージに関わる非常に幅広いものです。

赤ちゃんの誕生から始まる「乳幼児健診」や「母親学級」、高齢者宅を訪問して介護予防を支援する「家庭訪問」、生活習慣病を予防するための「健康教室」の開催、近年重要性を増している「精神保健相談」、そして結核や新型コロナウイルスといった「感染症対策」や「難病患者支援」まで、地域の健康課題の全てが仕事の対象となります。

まさに、地域の健康を守る司令塔のような存在です。

産業保健師

産業保健師は、一般企業の医務室や健康管理室に所属し、そこで働く従業員の健康を守る専門家です。

その目的は、従業員が心身ともに健康で、いきいきと働き続けられる環境を整えることです。

具体的な仕事としては、従業員の「健康診断」の企画・実施と、その結果に基づく保健指導、近年特に重要視されているストレスチェックや「メンタルヘルス相談」、長時間労働者への面談、そして実際に職場を巡回して危険な箇所や健康を害する要因がないかを確認する「職場巡視」などがあります。

従業員の健康を守ることは、企業の生産性向上にも直結するため、経営的な視点も求められます。

求人数は行政保健師に比べて少なく、非常に人気が高いため、競争率が高いのが特徴です。

学校保健師

学校保健師は、私立の小学校・中学校・高校や、大学、専門学校などの「学校」に勤務します。

いわゆる「保健室の先生」として、学生や教職員の健康管理を担います。

日々の業務は、ケガや急な体調不良に対する応急処置、健康相談、健康診断のサポート、そして「いのちの授業」のような保健教育の実施などです。

特に大学などでは、一人暮らしで心身のバランスを崩しやすい学生のメンタルヘルスケアも重要な役割となります。

なお、公立の小中学校で働く「養護教諭」になるには、養護教諭の免許状が別途必要ですが、私立学校や大学などでは保健師免許のみで勤務できる場合があります。

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保健師になるには?資格取得までの3つのルート

「予防医療の専門家」である保健師になるためには、どのような道のりがあるのでしょうか。

看護師資格の取得が前提となる保健師への道は、大きく3つのルートに分けられます。

ルート①:統合カリキュラムでダブル取得(4年制大学)

最もストレートな方法は、看護師と保健師の両方の養成課程が統合された4年制大学で学ぶことです。

高校卒業後、この統合カリキュラムを持つ大学に入学し、必要な単位を修得すると、4年次の卒業時に看護師と保健師、両方の国家試験受験資格を得ることができます。

現役で進学する学生の多くがこのルートを選択します。

ルート②:看護師資格取得後に養成所へ(1年間)

看護師として一度臨床現場で働いた後や、看護大学・短大・専門学校を卒業した後に保健師を目指す場合に、最も一般的なのがこのルートです。

看護師資格を取得した上で、1年制の保健師養成所(専門学校や大学の専攻科など)に入学し、専門知識と実習を集中的に学びます。

ルート③:看護師資格取得後に大学院へ

より高度な専門性を追求したい場合は、看護師資格取得後に看護系の大学院(修士課程)に進学する道もあります。

公衆衛生看護学などを専攻し、2年間かけて保健師としての専門知識・技術に加え、研究能力も養います。

将来、教育者や研究者、あるいは行政機関で指導的な立場を目指す場合に有利となるキャリアパスです。


これらのいずれかのルートを経て、最終的に年に1回、例年2月に行われる「保健師国家試験」に合格することで、晴れて保健師として働く資格を得ることができます。

近年の合格率は80~90%台で推移しており、養成機関でしっかりと学べば十分に合格を目指せる試験です。

保健師の給料・年収の実態は?

キャリアを考える上で、給料や年収は重要な判断材料です。

保健師全体の平均年収は、夜勤手当などがないにも関わらず、看護師と同等か、勤務先によってはやや高い水準にあり、約450万円~550万円が目安となります。

ただし、これは働く場所によって大きく異なります。

行政保健師

行政保健師の給与は、地方公務員の給与規定に準じます。

初任給は高くないかもしれませんが、毎年着実に昇給し、勤続年数を重ねることで安定した収入を得ることができます。

賞与や退職金制度も整っており、生涯にわたる安定性が最大の魅力です。

産業保健師

産業保健師の給与は、勤務する企業の規模や業績に大きく左右されます。

福利厚生が手厚い大手企業や外資系企業に勤務する場合、保健師の中で最も高い年収(600万円以上も)が期待できる可能性があります。

学校保健師

学校保健師の給与は、勤務する学校法人の給与規定によります。

私立学校の場合はその法人の規定、国公立の大学などの場合は公務員の給与体系に準じるなど、様々です。

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保健師として働くメリット・デメリット

どんな仕事にも良い面と大変な面があります。保健師というキャリアを選ぶ前に、その両方を理解しておくことで、入職後のミスマッチを防ぐことができます。

保健師の大きなメリット

保健師として働くことの最大のメリットは、ワークライフバランスを実現しやすい点です。

基本的に土日祝休みの日勤勤務であるため、家族や友人との時間を大切にしながら、プライベートも充実させることができます。

また、夜勤がなく、力仕事も少ないため、身体的な負担が少なく、年齢を重ねても長く働き続けやすいのも魅力です。

そして、個人だけでなく、地域や組織全体の健康に貢献できるという、スケールの大きな社会貢献性は、何物にも代えがたいやりがいにつながります。

特に行政保健師の場合は、公務員としての雇用の安定性も大きなメリットと言えるでしょう。

知っておくべきデメリット・大変さ

一方で、知っておくべき現実もあります。

保健師の仕事では、採血や注射といった直接的な医療行為を行う機会がほとんどありません

そのため、臨床現場で培った看護スキルを維持したいという方にとっては、物足りなさやスキル低下への不安を感じることがあります。

また、予防活動は、その成果が数字としてすぐに見えにくいため、モチベーションの維持が難しいと感じることもあるかもしれません。

さらに、医療・保健・福祉にわたる幅広い知識に加え、多機関との連携や様々な立場の人と円滑に話を進める高度な調整能力が求められます。

時には、貧困や虐待、精神疾患といった、一筋縄ではいかない社会の複雑な課題に直面する精神的なタフさも必要とされます。

保健師の将来性とキャリアパス

社会が変化する中で、保健師の役割と需要は今後ますます高まっていくと予測されています。

超高齢社会の進展による介護予防の重要性の高まり、働く人のストレス増大に伴うメンタルヘルス対策の必須化、そして企業が従業員の健康を経営資源と捉える「健康経営」への関心の高まりなど、あらゆる場面で「予防」の専門家である保健師の知見が必要とされているのです。

保健師としてのキャリアパスも多彩です。

  • 行政保健師であれば、経験を積んで係長や課長といった管理職を目指したり、感染症対策や精神保健、難病支援といった特定の分野のスペシャリストとして専門性を深めたりする道があります。

  • 産業保健師では、複数企業を統括するマネージャーになったり、専門性を活かしてフリーランスとして独立し、複数の企業と顧問契約を結んだりする働き方も可能です。

  • さらに、どの分野の保健師であっても、大学院に進学して後進を育成する教育者や、公衆衛生の研究を担う研究者を目指すキャリアも開かれています。

看護・医療業界でご就業中の皆様今の年収、 今の働き方に満足してますか?あなたの理想の職場を
転職のプロが実現

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まとめ

今回は、保健師という仕事について、その役割から働き方、なり方までを詳しく解説してきました。

保健師は、人々の健康を「病気になる前」から支える、予防と公衆衛生のスペシャリストです。

行政、産業、学校という多様なフィールドで、その専門性を発揮し、安定した働き方を実現できる魅力的なキャリアです。

あなたが看護師として培ってきた、人の体を理解し、人に寄り添う知識と経験は、保健師の仕事のあらゆる場面で必ず活かすことができます。

その力を、個人の治療から、地域や社会をまるごと元気にするという、もっと大きなステージで発揮してみませんか?

保健師という働き方に興味が湧いたら、まずはどんな求人があるのか、その目で確かめてみてください。

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