療養型病院とは?仕事内容から急性期との違いまで徹底解説

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最終更新日:2025/07/22

療養型病院とは?仕事内容から急性期との違いまで徹底解説

「療養型病院」という言葉に、どのようなイメージをお持ちですか? 「なんとなく、ゆったりしてそう」「急性期とは違うみたいだけど、具体的には何をする場所なの?」 医療・福祉の現場でキャリアを考える際、このような疑問を抱えている方も多いかもしれません。 この記事では、療養型病院がどのような役割を担う施設なのか、基本的な定義から、急性期病院や回復期リハビリテーション病棟との違い、さらには職種別の仕事内容、働くメリット・デメリットまでを網羅的に解説していきます。 この記事を最後まで読めば、療養型病院という働き方のリアルな姿が分かり、「患者さんとじっくり向き合う」という理想の働き方が実現できるか、あなたのキャリアの選択肢として適切かを判断できるようになるはずです。

目次

  • 療養型病院とは?その役割と種類を解説

  • どう違う?一般病院(急性期)・回復期との比較

  • 【職種別】療養型病院のリアルな仕事内容

  • 働く前に知りたい!療養型病院のメリット・デメリット

  • 療養型病院に向いているのはこんな人!

  • まとめ

療養型病院とは?その役割と種類を解説

療養型病院は、医療・介護の現場において非常に重要な役割を担っています。

まずはその基本的な役割と、現在の制度における種類について理解を深めましょう。

療養型病院の役割は「長期的な医療とケアの提供」

療養型病院の最も大きな役割は、急性期病院での治療は終えたものの、すぐに自宅や介護施設へ退院することが難しい患者さんを受け入れ、長期的な視点で医療とケアを提供することです。

対象となるのは、容態は比較的安定しているものの、人工呼吸器の管理や中心静脈栄養、頻繁な痰の吸引、褥瘡(床ずれ)の処置といった、常時医療的な管理が必要な患者さんが中心です。

また、重度の身体的な障害や認知症を合併している方も多くいらっしゃいます。

療養型病院では、このような患者さんの状態を「医療区分」や「ADL区分」といった専門的な指標で分類し、一人ひとりに必要な医療・ケアを提供しています。

つまり、医療依存度が高く、ご自宅での生活が困難な方々にとって、安心して療養生活を送るための大切な場所なのです。

療養病床の現在の形:「医療療養病床」と「介護医療院」

療養病床の制度は、時代のニーズに合わせて変化してきました。

かつては医療保険適用の「医療療養病床」と介護保険適用の「介護療養病床」がありましたが、医療と介護の役割分担を明確にするため、「介護療養病床」は2024年3月末をもって完全移行期間を終え、廃止されました。

その結果、現在の長期療養の受け皿は、主に「医療療養病床」と、新たな施設形態である「介護医療院」に整理されています。

  • 医療療養病床
    医療保険が適用される病床で、主に医療区分が高い、つまり医療の必要性が特に高い患者さんが入院します。病状の管理や医療処置がケアの中心となり、病院としての性格が強いのが特徴です。

  • 介護医療院
    介護保険が適用される施設で、「介護療養病床」の転換先として創設されました。長期的な医療と介護を提供すると同時に、「生活の場」としての機能を重視している点が大きな特徴です。プライバシーに配慮した療養環境や、地域住民との交流の機会を設けるなど、単なる療養施設ではなく、尊厳を支える「住まい」としての役割を担います。

求人を探す際には、その施設が「医療療養病床」なのか「介護医療院」なのかによって、提供されるケアの重点や雰囲気が異なることを理解しておくと良いでしょう。

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どう違う?一般病院(急性期)・回復期との比較

「療養型」と一言で言っても、他の病院機能との違いが分かりにくいかもしれません。

ここでは、一般的に「急性期」と呼ばれる病院や、「回復期リハビリテーション病棟」との違いを比較し、それぞれの役割を明確にしていきます。

一目でわかる!目的と入院期間の違い

まずは、それぞれの施設の目的や入院期間などを表で比較してみましょう。

これを見るだけで、それぞれの役割の違いが明確になります。

比較項目

療養型病院

急性期病院

回復期リハビリテーション病棟

施設の目的

長期的な医療・療養、生活の場の提供

救命、病気の治療

集中的なリハビリによる在宅復帰支援

対象患者

容態が安定した慢性期の患者

命に関わる重症・急性の患者

急性期を脱し、リハビリが必要な患者

入院期間

長期(数ヶ月~数年単位)

短期(数日~3週間程度)

中期(最長180日等の制限あり)

ケアの中心

療養上のケア、QOL維持

検査・治療

機能回復のためのリハビリ

急性期病院との違い:「時間の流れ」と「求められるスキル」

急性期病院との最も大きな違いは、流れる時間の速さと、それに伴って求められるスキルです。

急性期病院は、まさに時間との戦いの場です。

次々と運ばれてくる救急患者への対応、緊急手術、分刻みの検査など、常に緊張感が漂い、目まぐるしく状況が変化します。

ここでは「治療」が最優先され、スタッフには迅速な判断力や正確な処置能力が求められます。

一方、療養型病院の時間は、比較的ゆったりと流れています。

もちろん急変のリスクは常にありますが、基本的には患者さんの生活リズムに合わせたケアが中心です。

求められるスキルは、患者さんの表情や言動、バイタルサインのわずかな変化を捉える観察力や、根気強くケアを続ける継続力、そして患者さんやご家族の思いに寄り添う共感力といった、より深い関わりに根差したものになります。

回復期リハビリテーション病棟との違い:「ゴールの設定」

回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)も、急性期を脱した患者さんが対象という点では似ていますが、目指すゴールが明確に異なります。

回復期リハ病棟のゴールは、多くの場合「在宅復帰」です。

脳卒中や大腿骨骨折などの患者さんに対し、医師、看護師、理学療法士、作業療法士などが一つのチームとなり、集中的なリハビリテーションを提供して機能回復を目指します。

入院期間も疾患ごとに上限が定められており、ゴールに向かって集中的に取り組む場所と言えます。

対して療養型病院のゴールは、一人ひとりの患者さんによって様々です。

これ以上の機能低下を防ぐ「機能維持」がゴールの場合もあれば、穏やかな療養生活を続けること自体がゴールの場合もあります。

また、人生の最終段階を安らかに過ごす「看取り(ターミナルケア)」も重要な役割の一つです。

このように、患者さんの状態や価値観に合わせて、多様なゴールを設定し、長期的に支えていくのが療養型病院の役割です。

【職種別】療養型病院のリアルな仕事内容

療養型病院では、様々な職種のスタッフがそれぞれの専門性を活かして働いています。

ここでは、主な職種の仕事内容について具体的に見ていきましょう。

看護師の仕事

療養型病院における看護師の仕事は、患者さんの日常生活に深く寄り添うケアが中心となります。

バイタルサインの測定、褥瘡の予防・処置、喀痰吸引、経管栄養の管理といった、日々の健康管理と医療処置が主な業務です。

急性期病院のような慌ただしさはありませんが、患者さんの全身状態を注意深く観察し、異常を早期に発見する重要な役割を担います。

また、患者さんやご家族とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、意思決定を支援したり、人生の最終段階に寄り添う看取り(ターミナルケア)に深く関わったりする機会が多いのも、療養型病院の看護師の大きな特徴です。

介護職(介護福祉士・看護助手)の仕事

介護職は、患者さんの「生活」を最も近くで支える専門職です。

食事、入浴、排泄、移乗といった身体介助が業務の中心となりますが、その役割は単なる身の回りのお世話にとどまりません。

患者さんの生活に彩りを加えるレクリエーションを企画・実施したり、傾聴を通じて精神的な支えになったりと、QOL(生活の質)の向上に直接的に貢献します。

医療依存度の高い方が多いため、看護師と密に連携しながら働くことで、医療的な知識や観察眼も身につき、介護の専門職として大きく成長できる環境です。

リハビリ専門職(PT・OT・ST)の仕事

療養型病院におけるリハビリテーションは、身体機能の「回復」よりも「維持・向上」を目的として行われるのが特徴です。

理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)は、患者さんの状態に合わせて長期的な視点でアプローチします。

例えば、寝たきりによる拘縮(関節が固まること)を防ぐための関節可動域訓練、誤嚥性肺炎を予防するための嚥下訓練、ベッドサイドで行える簡単なレクリエーション活動の提案など、その人らしい生活を少しでも長く続けられるような支援を行います。

急性期や回復期とは異なる、じっくりと関わるリハビリのやりがいがあります。

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働く前に知りたい!療養型病院のメリット・デメリット

療養型病院への転職を考えるなら、良い面だけでなく、事前に知っておくべき点も理解しておくことが大切です。

療養型病院で働く5つのメリット

まず、療養型病院で働くことの魅力的な点を5つご紹介します。

第一に、患者さんとじっくり向き合えることです。

入院期間が長いため、一人ひとりの患者さんと深い信頼関係を築き、その人らしい生活に寄り添うケアが実現できます。

第二に、ワークライフバランスを保ちやすい点が挙げられます。

緊急入院や急な手術がほとんどなく、患者さんの状態も比較的安定しているため、残業が少なく定時で帰りやすい傾向にあります。

第三に、精神的なプレッシャーが比較的少ないことです。

常に命の危機に直面する急性期とは異なり、落ち着いた環境で日々の業務に取り組むことができます。

第四に、ブランクがあっても復職しやすい環境であることです。

業務内容がある程度定型化されており、新人や復職者への教育体制を整えている病院も多いため、安心して再スタートを切ることができます。

そして第五に、高齢者看護・介護の専門性が高まることです。

認知症ケアやターミナルケア、慢性期疾患の管理といったスキルは、高齢化社会においてますます需要が高まるため、将来性のある専門知識を深めることができます。

知っておくべき3つのデメリット

一方で、療養型病院ならではの注意点も存在します。

一つ目は、最新の医療知識・技術に触れる機会が少ないことです。

急性期病院のように最先端の医療機器を扱ったり、珍しい症例を経験したりする機会は限られます。

そのため、常に新しい医療を学びたいという意欲の強い方には、物足りなさを感じるかもしれません。

二つ目は、それに伴い、スキルアップへの意識が常に必要になることです。

日々の業務に慣れて受け身の姿勢でいると、知識や技術が少しずつ古くなってしまう恐れがあります。

外部の研修に参加するなど、自己学習を続ける意識が重要になります。

三つ目は、看取り(ターミナルケア)の多さです。

患者さんの人生の最終段階に寄り添えることは大きなやりがいですが、同時に、大切な患者さんの死に何度も立ち会うことになります。

これには精神的な強さが求められる側面があることも、理解しておく必要があります。

療養型病院に向いているのはこんな人!

これまでの内容を踏まえて、あなたが療養型病院に向いているかどうか、チェックしてみましょう。

もしあなたが、お年寄りとコミュニケーションを取ることが好きで、一人ひとりの患者さんに深く、長く関わる看護や介護を実践したいと考えているなら、療養型病院は非常にやりがいのある職場となるでしょう。

また、仕事とプライベートを両立させ、ゆとりを持った生活を送りたい方や、急性期病院のスピード感や慌ただしさから少し距離を置きたいと考えている方にとっても、理想的な環境かもしれません。

さらに、結婚や出産などでブランクがあり、比較的落ち着いた環境でキャリアを再スタートしたいと考えている方にも、療養型病院は最適な選択肢の一つです。

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まとめ

今回は、療養型病院について、その役割から仕事内容、急性期との違いまでを詳しく解説しました。

療養型病院は、急性期の治療を終えた患者さんの長期的な医療とケアを担う、「生活に寄り添うための場所」です。

急性期とは異なる穏やかな時間の流れの中で、患者さん一人ひとりとじっくり向き合えることが、最大の魅力と言えるでしょう。

ワークライフバランスを重視しながら、医療従事者としてのやりがいもしっかりと感じられる療養型病院は、多くの方にとって魅力的な職場です。

この記事が、あなたの理想の働き方を見つけるための一助となれば幸いです。

ご自身のキャリアについて、もっと詳しく相談したい、自分に合う求人を見つけたいという方は、ぜひお気軽にキャリアの専門家にご相談ください。

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