【完全ガイド】病院とクリニックの違いとは?働き方からキャリアまで徹底比較

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最終更新日:2025/07/22

【完全ガイド】病院とクリニックの違いとは?働き方からキャリアまで徹底比較

「病院とクリニック、働くならどっちがいいんだろう?」 「なんとなく規模が違うのは分かるけど、具体的に何が違うの?」 医療業界でのキャリアを考えるとき、多くの人がこの疑問に直面します。職場は、日々の働きがいだけでなく、給与やプライベート、そして将来のキャリアプランにまで大きく影響する重要な選択です。 そこでこの記事では、看護・医療業界での就職・転職を考えるすべての方に向けて、病院とクリニックの違いを徹底的に解説します。医療法における定義といった基本的な違いから、医療スタッフの働き方、給与、キャリアパス、人間関係まで、7つの視点で比較していきます。 この記事を最後まで読めば、あなたが働く上で何を大切にしたいかが明確になり、後悔しない職場選びができるようになるはずです。

目次

  • 【結論】病院とクリニックの最も大きな違いは「病床数」

  • 【徹底解説】医療スタッフの働き方はどう違う?7つの視点で比較

  • あなたはどっち向き?病院・クリニックおすすめタイプ

  • キャリアチェンジのメリット・デメリット

  • まとめ

【結論】病院とクリニックの最も大きな違いは「病床数」

数ある違いの中で、病院とクリニックを区別する最も本質的で、法律に基づいた違いは「病床数(ベッドの数)」です。

実は、この病床数の違いが、それぞれの施設の役割や設備、ひいては医療スタッフの働き方まで、あらゆる違いを生み出す源泉となっています。

一目でわかる!病院とクリニックの比較表

まずは、全体像を掴むために、病院とクリニックの主な違いを表で見てみましょう。

項目

病院

クリニック(診療所)

病床数

20床以上

19床以下 or なし

法律上の定義

医療法で定められた「病院」

医療法で定められた「診療所」

主な役割

急性期医療、専門医療、救急、手術

プライマリ・ケア(かかりつけ医)

設備

手術室、検査室、リハビリ室など大規模

診察室、処置室など比較的小規模

スタッフ数

多い(多職種が在籍)

少ない(少数精鋭)

夜勤

あり(職種による)

ほとんどなし

この表からも分かる通り、両者には明確な違いが存在します。

では、その根拠となる法律上の定義について、もう少し詳しく見ていきましょう。

すべての違いの元になる「医療法」での定義

普段私たちが何気なく使っている「病院」や「クリニック」という言葉は、医療法という法律で明確に定義されています。

病院

20人以上の患者を入院させるための施設を有するもの」と定められています。

つまり、入院用のベッドが20床以上ある医療施設が「病院」です。

クリニック(診療所)

法律上の正式名称は「診療所」です。

こちらは「患者を入院させるための施設を有しないもの又は19人以下の患者を入院させるための施設を有するもの」と定義されています。

ベッドがない、もしくなはあっても19床以下の施設が「クリニック(診療所)」に分類されます。

この「20床」というボーダーラインが、両者の役割を大きく分けています。

20床以上の入院機能を持つ病院は、より重症な患者の治療や手術、24時間体制での救急対応など、地域医療の中核を担うことが期待されます。

一方、クリニックは地域住民に最も身近な「かかりつけ医」として、初期診療や慢性疾患の管理を担うことが主な役割となります。

この根本的な役割の違いが、次に解説する医療スタッフの働き方の違いに直結していくのです。

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【徹底解説】医療スタッフの働き方はどう違う?7つの視点で比較

ここからは、医療従事者の視点から、病院とクリニックの働き方が具体的にどう違うのかを7つのポイントで詳しく比較・解説していきます。

ご自身の職種や希望、適性を考えながら読み進めてみてください。

違い① 役割・機能

まず、働く場所の「役割」が違えば、そこで働く医療スタッフの役割も変わってきます。

病院の役割・機能

病院は、地域医療の「最後の砦」ともいえる存在です。

救急車で運ばれてくるような重症患者の治療、がんなどの専門的な治療、大掛かりな手術など、高度で専門的な医療を提供します。

まさしく「命を救う」最前線としての役割を担っており、各専門職には迅速かつ的確な判断と行動が求められます。

大学病院や総合病院などがこれにあたります。

クリニックの役割・機能

一方、クリニックは、地域住民にとって最も身近な医療の入り口である「かかりつけ医」としての役割を担います。

風邪や腹痛といった日常的な病気の初期診療(プライマリ・ケア)から、高血圧や糖尿病といった慢性疾患の継続的な管理、健康相談や予防接種まで、幅広く対応します。

患者さんやその家族と長期的な関係を築き、日々の健康を支えるパートナーのような存在です。

違い② 働き方・業務内容

施設の役割が違うため、日々の働き方や業務内容も大きく異なります。

病院の働き方・業務内容

病院では、医師、看護師、薬剤師、理学療法士・作業療法士(PT/OT)といったリハビリ専門職、臨床検査技師、診療放射線技師など、非常に多くの専門職が連携する「チーム医療」が基本です。

業務はそれぞれの専門分野に特化しており、職種ごとの役割分担が明確です。

勤務形態は、看護師や一部の技術職などでは日勤・夜勤のシフト制が基本となり、24時間体制で医療を提供します。

また、日々の業務に加え、多職種カンファレンスや院内委員会、研修なども多く、専門職として刺激の多い日々を送ることが一般的です。

クリニックの働き方・業務内容

対してクリニックでは、院長である医師を中心に、看護師、医療事務、検査技師など、比較的少人数のスタッフで運営されます。

そのため、専門業務だけでなく、職種の垣根を越えて協力し合う場面が多くなります。

例えば、看護師が受付業務を一部手伝ったり、医療事務が簡単な診療補助を行ったりと、全員でクリニックを運営していくスタイルです。

入院施設のないクリニックが多いため、勤務は基本的に日勤のみ。診療時間に合わせて働くため、生活リズムを整えやすいのが大きな特徴です。

違い③ 給与・福利厚生

働く上で非常に重要な給与や福利厚生にも、病院とクリニックでは傾向の違いが見られます。

病院の給与・福利厚生

病院は、基本給が比較的高めに設定されている傾向にあります。

看護師や一部のコメディカル職では、夜勤手当や時間外手当が加算されるため、総支給額は高くなることが多いです。

また、経営母体が大きい医療法人や公的機関であることが多く、住宅手当や家族手当、退職金制度などが手厚い傾向にあります。

職員向けの寮や院内保育所を完備している施設も多く、福利厚生が充実している点は大きな魅力です。

クリニックの給与・福利厚生

一方のクリニックは、夜勤がない職種がほとんどのため、病院勤務に比べて総支給額は落ち着くことが一般的です。

しかし、日勤のみの給与で比較すると、経験やスキルによっては病院勤務と遜色ない、あるいはそれ以上の給与が提示されるケースもあります。

特に専門性の高いクリニック(美容、不妊治療、整形外科など)では、その傾向が強いです。

福利厚生は、クリニックの経営方針や規模に大きく左右されるため、転職の際には事前にしっかりと確認することが重要です。

違い④ 求められるスキル・経験

それぞれで担う役割が異なるため、医療スタッフに求められるスキルや経験も変わってきます。

病院で求められるスキル・経験

病院で働くスタッフには、それぞれの専門分野における高度な知識と技術が求められます。

例えば、看護師であれば重症患者への対応力、理学療法士であれば複雑な症例に対するリハビリ計画の立案能力、臨床検査技師であれば高度な分析技術などです。

共通して求められるのは、多職種と円滑に連携し、チームとして最高のアウトプットを出すためのコミュニケーション能力です。

クリニックで求められるスキル・経験

クリニックで最も求められるのは、職種を問わず、患者さんやその家族と良好な関係を築くための高いコミュニケーション能力と接遇マナーです。

患者さんは不安を抱えて来院するため、安心感を与える丁寧な対応や分かりやすい説明が欠かせません。

技術面では、各職種の基本的なスキルを正確かつ迅速に行えることが重要です。

また、少人数で幅広い業務をこなすため、マニュアル通りではない状況にも柔軟に対応できる応用力が求められます。

違い⑤ キャリアパス・スキルアップ

将来のキャリアを考えたとき、スキルアップの環境も大きな違いとなります。

病院でのキャリアパス・スキルアップ

病院は、教育・研修制度が非常に充実しています。

新人研修はもちろん、職種ごと・経験年数に応じた研修や、専門分野の勉強会が頻繁に開催されます。

認定看護師、認定理学療法士、専門臨床検査技師など、各職種で専門資格の取得を支援する制度が整っている場合も多く、スペシャリストを目指すには最適な環境です。

また、現場の専門職から管理職、教育担当など、多様なキャリアパスが描けるのも魅力です。

クリニックでのキャリアパス・スキルアップ

クリニックでは、特定の分野(例えば、整形外科クリニックの理学療法士、眼科クリニックの視能訓練士など)における専門性は深まりますが、病院のように幅広い症例を経験する機会は限られます。

スキルアップを目指すには、院外の研修会や学会へ自主的に参加する姿勢が重要になります。

一方で、地域医療に根差したゼネラリストとしてのスキルが身につきます。

また、小規模な組織だからこそ、院長の右腕としてクリニック全体の運営に関わるなど、若いうちからマネジメント経験を積める可能性もあります。

違い⑥ 職場の人間関係

職場の雰囲気や人間関係は、働きやすさを左右する重要な要素です。

病院の人間関係

病院は、スタッフの数が多く、組織として成り立っています。

そのため、同じ職種の同期や年の近い同僚がいる心強さがあり、仕事の悩みを相談しやすい環境であることが多いです。

また、数年ごとに部署異動があるため、もし人間関係に悩んだとしても、環境を変えることでリセットできる可能性があります。

一方で、規模が大きいゆえに、部署間や職種間の連携がスムーズにいかないといった組織特有の課題が生じることもあります。

クリニックの人間関係

クリニックは、院長をはじめ数名から十数名程度のスタッフで構成されるため、人間関係は非常に密接になります。

スタッフ同士の距離が近く、アットホームで和気あいあいとした雰囲気の職場が多いのが特徴です。

チームワークが良ければ、非常に働きやすい環境となるでしょう。

しかし、その反面、一度人間関係がこじれてしまうと、狭いコミュニティの中では修復が難しく、職場に居づらくなってしまうリスクもはらんでいます。

違い⑦ 対象となる患者さん

どのような患者さんと関わりたいかも、職場選びの重要な視点です。

病院の対象となる患者さん

病院では、急性期から回復期、慢性期、終末期まで、あらゆる健康レベルの患者さんと関わります。

特に大学病院や総合病院では、重篤な疾患を抱えた患者さんが多く、入退院も頻繁です。

そのため、多くの患者さんと、その人のある一時期を集中的に関わることが中心となります。

クリニックの対象となる患者さん

クリニックでは、比較的症状が安定している慢性疾患の患者さんや、特定の悩みを持つ患者さんが主な対象です。

定期的に通院される方が多いため、一人の患者さんと顔なじみになり、生活背景も含めて長期間にわたってじっくりと関わることができます。

「〇〇さん、最近調子はどうですか?」といった会話が生まれるのも、クリニックならではの光景です。

あなたはどっち向き?病院・クリニックおすすめタイプ

ここまで7つの違いを見てきました。

では、あなたはどちらのタイプでしょうか?ご自身の希望を整理してみましょう。

こんなあなたには「病院」がおすすめ!

もしあなたが、最先端の医療や急性期医療の現場で専門職として自分を試したいという情熱を持っているなら、病院が向いているでしょう。

専門性を高めて認定資格などを目指したい、キャリアアップを明確に描きたいという方にも最適な環境です。

また、給与や福利厚生といった待遇面を重視し、安定した基盤の上で働きたいと考える方にもおすすめです。

多くの同僚と切磋琢磨しながら、多様な症例を経験して医療人としてのスキルを総合的に磨きたいという成長意欲の高い方には、病院が素晴らしい舞台となるはずです。

こんなあなたには「クリニック」がおすすめ!

仕事とプライベートのバランスを大切にし、自分らしい生活を築きたいと考えているなら、クリニックが有力な選択肢です。

夜勤のない規則的な生活リズムは、子育てや介護、趣味の時間との両立を可能にします。

一人の患者さんとじっくり向き合い、その人の人生に長く寄り添う医療をしたいという方には、大きなやりがいを感じられるでしょう。

地域医療に貢献しているという実感を得ながら、アットホームな雰囲気の職場で働きたい方、そしてコミュニケーション能力を活かしたい方にとって、クリニックは理想的な職場となる可能性があります。

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キャリアチェンジのメリット・デメリット

すでに実務経験のある方が、病院からクリニックへ、あるいはその逆へ転職するケースも増えています。

ここでは、それぞれのキャリアチェンジにおける注意点を解説します。

病院からクリニックへ転職する場合の注意点

メリット

病院での専門経験を活かしてクリニックへ転職する際には、多くのメリットがあります。

日勤のみになることで体力的負担が大幅に減り、ワークライフバランスを実現しやすくなります。

また、患者さんと密な関係を築けることに喜びを感じる方も多いでしょう。

デメリット

夜勤のある職種だった場合、手当がなくなるため給与が下がる可能性は考慮しておく必要があります。

また、教育制度が整っていないことが多く、即戦力として期待されるプレッシャーを感じるかもしれません。

成功のポイントは、面接時に給与だけでなく年間休日や残業の実態までしっかり確認すること、そして専門業務以外の仕事も担う柔軟性を持つことです。

見学などを通して、職場の雰囲気を肌で感じておくことも非常に重要です。

クリニックから病院へ転職する場合の注意点

メリット

クリニックから病院への転職は、キャリアアップやスキルの幅を広げる上で有効な選択です。

給与アップの可能性があり、充実した教育体制のもとで最新の医療知識や技術を学ぶことができます。

ブランクからの復帰を考える方にとっても、研修制度が整った病院は心強いでしょう。

デメリット

夜勤が始まることによる生活リズムの大きな変化や、業務の多忙化には覚悟が必要です。

また、クリニックでは経験しなかったような重症例への対応など、求められるスキルの高度化に戸惑うこともあるかもしれません。

成功のポイントは、自身の経験やスキルレベルに合った、教育・研修制度が充実している病院を選ぶことです。

転職前に、体力面や学習面での準備をしておくと、スムーズに新しい環境に適応できるでしょう。

まとめ

今回は、病院とクリニックの違いを、病床数という法律上の定義から、医療スタッフの働き方、給与、キャリアなど7つの視点で詳しく解説しました。

  • 病院は、高度医療を担い、専門性を磨く機会が豊富で、手厚い福利厚生が魅力。

  • クリニックは、地域に密着し、ワークライフバランスを実現しやすく、患者さんと長く関われるのが魅力。

どちらが良い・悪いということでは決してなく、それぞれに素晴らしい魅力と社会的な役割があります。

最も大切なのは、ご自身の価値観、ライフプラン、そして目指す医療人としての理想像に合った職場を選ぶことです。

この記事が、あなたがこれから歩むキャリアを考える上での、有益な情報となれば幸いです。

もし、「自分に合う職場がどちらかまだ迷う」「具体的な求人を紹介してほしい」と感じたら、一人で悩まずにキャリアの専門家に相談してみるのも一つの方法です。

あなたの理想の働き方を、一緒に見つけていきましょう。

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