介護施設とは?種類別の特徴と仕事内容を徹底比較!

施設・機関

最終更新日:2025/08/20

介護施設とは?種類別の特徴と仕事内容を徹底比較!

「高齢者と関わる仕事がしたいけど、特養、老健、デイサービス…種類が多すぎて、自分の専門性がどう活かせるのか分からない」 「看護師として介護施設で働く場合、病院の業務とどう違うんだろう?」 「理学療法士として、もっと生活に寄り添ったリハビリがしたいけど、どの施設が自分に合っているんだろう?」 医療専門職としてキャリアを考える中で、このような疑問を抱いたことはありませんか。超高齢社会を迎えた今、介護施設は看護師や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といった医療専門職にとって、非常に重要で将来性のある活躍のフィールドとなっています。 しかし、その種類の多さゆえに、各施設の特徴や求められる役割の違いが分かりにくいのも事実です。この記事では、数ある介護施設を分かりやすく分類し、それぞれの特徴と、そこで働く医療専門職、特に看護師とリハビリ専門職(PT・OT・ST)の仕事内容の違いを、具体的なシーンを交えながら徹底的に比較・解説していきます。 この記事を読み終える頃には、各介護施設の違いが明確になり、あなたの専門知識や技術、そしてキャリアプランに最もマッチした職場を見つけ出すための、確かな羅針盤を手にしているはずです。

目次

  • 医療職が知るべき介護施設の全体像

  • 【一覧表で比較】施設別・医療職の役割と特徴

  • 【入所型施設】各職種の仕事内容と求められる専門性

  • 【通所型施設】日帰りで関わる医療職の仕事

  • 医療職が介護施設で働くということ

  • まとめ

医療職が知るべき介護施設の全体像

まずは、介護施設というフィールドの基本的な考え方と、その多様な種類がなぜ存在するのか、医療職の視点から全体像を掴んでいきましょう。

介護施設の基本スタンス「治療」から「生活支援」へ

医療職が介護施設で働く上で、まず理解すべき最も重要なことは、その場の位置づけです。

病院が「治療・機能回復」を最優先する「医療の場」であるのに対し、介護施設は利用者がその人らしく日々を過ごす「生活の場」であるということです。

もちろん、医療的な管理やリハビリテーションは不可欠ですが、それはあくまで利用者の穏やかで安全な「生活」を支えるための手段です。

治療のためのスケジュールに利用者が合わせるのではなく、利用者の生活リズムや価値観の中に、いかに自然な形で医療やリハビリを組み込んでいくか。

この「生活者視点」へのマインドセットの転換が、介護施設で働く上での基本スタンスとなります。

なぜこんなに種類が多い?医療職の役割を決める2つの軸

では、なぜ介護施設はこれほどまでに種類が多いのでしょうか。

それは、高齢者の状態やニーズが一人ひとり全く異なるためです。

医療職が自分に合う職場を見つけるためには、この多様性を整理する「軸」を持つことが重要です。

その軸は、大きく2つあります。

一つ目は、「施設の目的(ゴール)」です。

その施設が、在宅復帰をゴールとする「中間施設」なのか、生涯にわたって暮らすことを前提とした「終の棲家」なのか。

この目的の違いによって、看護師の関わり方や、リハビリ専門職が立てるリハビリの目標設定が根本的に変わってきます。

二つ目は、「利用者の医療・リハビリニーズの高さ」です。

医療的なケアを常に必要とする方が多いのか、あるいはリハビリを積極的に求めている方が多いのか。

このニーズの高さによって、看護師やPT・OT・STの配置人数や、業務における専門性の比重が大きく異なってくるのです。

この記事では、この2つの軸を意識しながら、各施設の特徴を見ていきます。

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【一覧表で比較】施設別・医療職の役割と特徴

具体的な解説に入る前に、まずは主要な介護施設における医療職の役割の違いを一覧表で確認してみましょう。

この表を見るだけでも、自分がどの施設に興味を惹かれるか、大まかな方向性が見えてくるはずです。

介護施設・医療職の働き方 比較一覧表

施設の種類

施設の目的

【看護師】主な役割

【リハビリ職】主な役割

連携のポイント

特別養護老人ホーム(特養)

終の棲家・生活の場

長期的な健康管理、看取りケア

生活機能の「維持」、集団リハビリ、環境整備

介護職との密な連携がケアの質を左右する

介護老人保健施設(老健)

在宅復帰・リハビリ拠点

医療的管理、退院後ケア、他職種連携

ADL向上を目指す「専門的」リハビリの実践

医師、看護、リハ、介護のチームアプローチが必須

介護付き有料老人ホーム

多様なニーズに応える住まい

健康管理、個別性の高いサービス、接遇

生活の質を高める機能訓練、個別ニーズ対応

利用者(お客様)と家族の要望を汲み取る視点

デイサービス(通所介護)

社会参加・機能維持

利用者の安全確保、健康チェック、簡単な処置

集団体操、レクを通じた機能訓練の提供

利用者に「楽しんでもらう」工夫、送迎スタッフとの連携

デイケア(通所リハビリ)

専門的リハビリの提供

リハビリ中の安全管理、医療的サポート

在宅生活に直結した「専門的」リハビリの実践

看護とリハビリが車の両輪となり目標を共有する

【入所型施設】各職種の仕事内容と求められる専門性

それでは、利用者が居住する「入所型施設」について、医療職の仕事内容を具体的に掘り下げていきましょう。

特別養護老人ホーム(特養)

特養は、要介護3以上の比較的重度な方が、終の棲家として長期的に生活する施設です。

そのため、医療職の関わり方も長期的で、利用者の人生に深く寄り添う視点が求められます。

看護師の仕事と専門性

特養での看護師の仕事は、大きく分けて「日々の健康管理」「急変時の対応」「看取りケア」の3本柱です。

日々のバイタルチェックや配薬管理、褥瘡(床ずれ)や皮膚トラブルの処置、経管栄養や喀痰吸引といった医療的ケアを通じて、利用者の状態を安定させることが基本です。

夜間は看護師が不在の場合も多いため、日中の観察からわずかな変化を察知し、嘱託医に的確に報告・相談するアセスメント能力が極めて重要になります。

そして、人生の最終段階を迎える利用者に対して、苦痛を緩和し、その人らしく穏やかな最期を迎えられるよう支援する「看取りケア」は、特養看護の専門性が最も発揮される場面です。

介護職と密に連携し、チームで利用者の尊厳を守ります。

リハビリ専門職の仕事と専門性

特養におけるリハビリ専門職は、「機能訓練指導員」として配置されます。

ここでのリハビリのゴールは、病院のように「機能を回復させる」ことではなく、今ある機能をできるだけ長く「維持する」ことです。

そのため、マンツーマンでの個別リハビリよりも、歩行訓練や体操などの集団リハビリや、食事や着替えといった日常生活の動作そのものをリハビリと捉える「生活リハビリ」の計画・実施が中心となります。

また、利用者に合った車椅子や杖を選定したり、介護職に安全な介助方法を指導したりと、療養環境全体に働きかける役割も担います。

介護老人保健施設(老健)

老健は、病院での治療を終えた方が、在宅復帰を目指して集中的にリハビリを行う「中間施設」です。

入所期間は原則3〜6ヶ月と短く、明確なゴールに向かって多職種が連携する、ダイナミックな現場です。

老健は、介護施設の中でも特に医療依存度の高い利用者が多いのが特徴です。

病院から退院したばかりの方が多いため、経管栄養や気管カニューレの管理、点滴、創傷処置など、病院に近いレベルの医療的ケアが求められます。

医師が常駐しているため、その指示のもと迅速に対応するスキルが必要です。

また、医師、リハビリ専門職、介護職、支援相談員などが一堂に会するカンファレンスが頻繁に開かれ、看護師は医療的な視点から利用者の状態を報告し、チームの方針決定に重要な役割を果たします。

退所前には、在宅での生活を安心して送れるよう、家族へ介護指導や医療機器の取り扱い説明を行うことも大切な仕事です。

リハビリ専門職の仕事と専門性

リハビリ専門職にとって、老健は専門性を最も発揮できる職場の一つです。

理学療法士(PT)は歩行や起き上がりといった基本的な動作能力(ADL)の向上を、作業療法士(OT)は食事や料理、着替えといった応用的な生活動作(IADL)や精神面のケアを、言語聴覚士(ST)は嚥下(飲み込み)訓練やコミュニケーション支援を担当します。

医師の指示に基づき、個別のリハビリ計画を立案・実行し、3ヶ月という限られた期間で目に見える成果を出すことが求められます。

多職種連携の要として、チームを牽引する存在となることも少なくありません。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、民間企業が運営する「住まい」です。

ホテルのような豪華な施設から、アットホームな施設まで多種多様で、利用者(お客様)一人ひとりのニーズに応える質の高いサービスが特徴です。

看護師の仕事と専門性

仕事内容は特養と似ていますが、より「接遇」の視点が重視されます。

日々の健康管理や医療機関との連携はもちろんのこと、利用者や家族からの健康に関する様々な相談に、丁寧かつ分かりやすく応えるコンシェルジュのような役割も担います。

医療処置の範囲は施設の方針によって大きく異なりますが、医療依存度の低い方が多いため、処置よりもコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、安心を提供することが主な仕事となる場合が多いです。

リハビリ専門職の仕事と専門性

ここでも「機能訓練指導員」としての役割が中心ですが、利用者の個別ニーズに応じた多彩なプログラムが求められるのが特徴です。

最新のトレーニングマシンを導入したパワーリハビリや、ヨガ、園芸、音楽といった趣味活動を通じて楽しみながら機能の維持・向上を図るなど、施設の特色を活かした企画力が試されます。

利用者の「〜がしたい」という想いを実現するための、創造性豊かなアプローチが期待されます。

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【通所型施設】日帰りで関わる医療職の仕事

次に、利用者が日帰りで利用する「通所型施設」を見ていきましょう。ワークライフバランスを重視する医療職に人気の高い職場です。

デイサービス(通所介護)

デイサービスは、利用者が自宅から通い、食事や入浴、レクリエーションなどを楽しむことで、社会的な孤立感を解消し、心身機能の維持を図る施設です。

ご家族の介護負担を軽減する「レスパイトケア」の役割も担っています。

看護師の仕事と専門性

デイサービスでの看護師の主な役割は「安全管理」です。

利用者が到着すると、まずバイタルサインを測定し、その日の健康状態や入浴の可否を判断します。

日中は、服薬管理やインスリン注射、簡単な創傷処置など、医療行為は比較的限定的です。

それよりも、大勢の利用者が安全に、そして楽しく一日を過ごせるよう、フロア全体に気を配り、体調に変化がないかを見守る観察眼が重要になります。

時にはレクリエーションに一緒に参加し、場を盛り上げることも大切な仕事の一つです。

リハビリ専門職の仕事と専門性

デイサービスに配置されるリハビリ専門職(機能訓練指導員)は、利用者の機能維持を目的とした機能訓練計画を作成し、実施します。

「〇〇体操」といった集団体操や、平行棒を使った歩行訓練、個別での簡単な筋力トレーニングなどが主な業務です。

介護職と協力して、レクリエーションの中にリハビリの要素を取り入れる(例えば、玉入れで腕を上げる動作を促すなど)といった工夫も求められます。多くの施設で送迎業務を兼務することもあります。

デイケア(通所リハビリテーション)

デイケアは、デイサービスと似ていますが、医師の指示のもとで専門的なリハビリテーションを提供することが主目的であるという点が大きく異なります。

看護師の仕事と専門性

デイケアでの看護師は、利用者が安心してリハビリに取り組めるよう、医療的な側面からサポートする重要な役割を担います。

リハビリ前後のバイタルチェックや体調管理はもちろんのこと、リハビリ中に気分が悪くなった方への対応や、持病の管理を行います。

リハビリ専門職と常に情報を共有し、「この方は血圧が変動しやすいので、運動負荷に注意してください」といったように、医療的な視点から助言を行う、頼れるパートナーです。

リハビリ専門職の仕事と専門性

デイケアは、老健と並び、PT・OT・STが在宅分野で最も専門性を発揮できる場所です。

利用者一人ひとりの身体機能や生活環境を評価し、在宅生活での具体的な目標(「近所のスーパーまで一人で歩いて買い物に行けるようになる」など)を設定し、それに基づいた個別のリハビリテーションを計画・実施します。

実際に利用者の自宅を訪問して家屋評価を行い、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修の提案をすることもあります。

医療職が介護施設で働くということ

最後に、介護施設で働くことの魅力やキャリアについて、医療職全体の視点からまとめてみましょう。

病院との違いと共通のやりがい

急性期の病院から介護施設へ転職すると、最初は「治療がゴールではないこと」や「医師が常にいない環境での判断」に戸惑うかもしれません。

しかし、それを乗り越えた先には、病院では得難い大きなやりがいがあります。

それは、利用者の病気だけでなく「生活」そのものに、専門職として深く、長く関われる喜びです。

看護師もリハビリ専門職も、介護職など他職種と対等な立場で意見を交わし、チームで一人の利用者の「その人らしい暮らし」を支えていく達成感は、何物にも代えがたいものです。

給与・待遇とワークライフバランスの実態

給与については、夜勤や各種手当がある急性期病院と比較すると、変動する可能性があります。

しかし、日勤帯の仕事としては安定した給与水準が期待でき、経験やスキルはきちんと評価されます。

何より大きな魅力は、ワークライフバランスの取りやすさです。

日勤が基本で残業が少なく、土日祝など休日が固定されている施設が多いため、子育てや介護、プライベートの時間を大切にしながら、長期的にキャリアを築いていきたいと考える医療職にとっては、非常に働きやすい環境と言えるでしょう。

介護施設で拓ける医療職のキャリアパス

介護施設での経験は、多様なキャリアパスに繋がります。

看護師であれば、現場のリーダーから看護部長、さらには施設全体の運営を担う施設長を目指す道があります。

また、認知症看護や緩和ケアなどの認定看護師資格を取得し、専門性を高めることも可能です。

リハビリ専門職であれば、リハビリ部門の責任者になったり、福祉用具や住宅改修の専門家として活躍したり、ケアマネジャーの資格を取得してケアプラン作成に携わったりと、活躍の場は広がっていきます。

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まとめ

今回は、多様で複雑な「介護施設」について、医療職の視点から種類別の特徴と仕事内容を解説しました。

それぞれの施設には明確な目的と役割があり、それによって看護師やリハビリ専門職に求められる専門性も大きく異なることがお分かりいただけたかと思います。

看護師は利用者の健康と暮らしを守るジェネラリストとして、リハビリ専門職は生活機能の維持・向上を支えるスペシャリストとして、どちらも不可欠な存在です。

特に、在宅復帰を目指す「老健」や、専門的なリハビリを提供する「デイケア」は、リハビリ専門職がその能力を最大限に発揮できるフィールドです。

この記事が、あなたの専門性や価値観、そして未来のキャリアプランに合った、最適な「働く場」を見つけるための地図となれば幸いです。

それぞれの施設の違いを理解した上で、ぜひ実際の求人情報に触れ、具体的な仕事内容や施設の雰囲気を確認してみてください。

あなたの医療専門職としての知識と技術は、利用者の豊かな「生活」を支えるために、介護の現場で輝きを増すはずです。

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