臨床工学技士とは?仕事内容、年収、なり方まで徹底解説!

職種

最終更新日:2025/08/01

臨床工学技士とは?仕事内容、年収、なり方まで徹底解説!

臨床工学技士は、医学と工学の両方の深い知識を持つ、いわば「いのちのエンジニア」。最新の医療機器を自らの手足のように操り、その装置を通して患者さんの命を直接支える、非常に重要な役割を担う専門職です。 この記事では、そんな臨床工学技士の具体的な仕事内容から、資格を取得するための道のり、気になる給料、そして将来性まで、そのダイナミックな仕事の全貌を、余すところなく解説していきます。

目次

  • 臨床工学技士とは?

  • 臨床工学技士の仕事内容【6大業務で知る最前線の仕事】

  • 臨床工学技士になるには?資格取得へのロードマップ

  • 臨床工学技士の主な就職先と働き方

  • 臨床工学技士の給料・年収とキャリアアップ戦略

  • 臨床工学技士の「やりがい」と「大変さ」

  • 臨床工学技士の将来性【医療の高度化と共に価値が高まる】

  • まとめ

臨床工学技士とは?

まずはじめに、臨床工学技士がどのような専門職で、医療現場においてどのような独自の立ち位置を占めているのか、その基本から理解していきましょう。

臨床工学技士の法的定義

臨床工学技士は、「臨床工学技士法」という法律に基づいて、厚生労働大臣から免許を与えられる国家資格です。

英語では「Clinical Engineer」と訳されることから、医療現場ではその頭文字をとって「CE(シーイー)」と呼ばれたり、あるいは「Medical Engineer」から「ME(エムイー)」と呼ばれたりすることも多い、医療チームに不可欠な専門家です。

独占業務:「生命維持管理装置」の操作と保守点検

臨床工学技士の役割を最も象徴するのが、その「独占業務」です。

それは、人工呼吸器や人工心肺装置、血液浄化装置(透析装置)といった、ひとの呼吸、循環、代謝といった生命維持機能の一部を代行する「生命維持管理装置」の操作と、その機器が常に安全かつ正常に作動するための保守点検を行うことです。

これらの業務は、法律によって臨床工学技士と医師のみに許されており、その責任の重さがうかがえます。

他の医療職との違い

医療チームにおける臨床工学技士の立ち位置は非常にユニークです。

例えば、看護師が患者さんの身体や心に直接触れてケアを行う「患者さんの専門家」だとすれば、臨床工学技士は、そのケアに使われる「医療機器の専門家」です。

医療機器という媒体を通して、患者さんの命を支える。

この「医療」と「工学」の架け橋となる点こそが、臨床工学技士の最大の特徴であり、他の医療職にはない専門性なのです。

看護・医療業界でご就業中の皆様今の年収、 今の働き方に満足してますか?あなたの理想の職場を
転職のプロが実現

メディともで転職の相談をする

臨床工学技士の仕事内容【6大業務で知る最前線の仕事】

「機械をいじる人」という漠然としたイメージを、ここで具体的にアップデートしましょう。臨床工学技士の仕事は、働く場所によって驚くほど多様で、それぞれに深い専門性が求められます。

血液浄化療法業務(透析室)

腎臓の機能が低下した腎不全の患者さんにとって、血液中の老廃物や余分な水分を取り除く血液透析は、まさに命綱です。

臨床工学技士の多くが、この血液浄化療法の専門家として透析室で活躍しています。

透析装置の準備や、透析回路の組み立て(プライミング)、患者さんのシャントへの針刺し(穿刺)、そして数時間にわたる透析中の患者さんの状態監視と装置の操作、終了後の装置のメンテナンスまで、一連のプロセスを一貫して担います。

呼吸治療業務(ICU・病棟)

病気や事故で自力での呼吸が困難になった患者さんのために、呼吸を代行するのが「人工呼吸器」です。

臨床工学技士は、この人工呼吸器のスペシャリストとして、ICU(集中治療室)や病棟を巡回します。

医師の指示に基づき、患者さん一人ひとりの状態に合わせて人工呼吸器の細かいモード設定や操作を行い、安全に作動しているかを常に監視(モニタリング)します。

手術室業務(オペ室)

手術室は、臨床工学技士の専門性が最も輝く場所の一つです。

特に心臓外科手術において、一時的に心臓と肺の機能を代行する「人工心肺装置」の操作は、臨床工学技士の業務の中でも最高度に専門的なものとされています。

手術中は、執刀医や麻酔科医と密に連携を取りながら、患者さんの全身状態を装置でコントロールするという、まさに命の舵取りを担います。

その他、レーザー装置や内視鏡手術装置、手術中の出血を回収して再び患者さんに戻す自己血回収装置など、手術室にある様々な機器の操作・管理も行います。

集中治療室(ICU)業務

重篤な状態の患者さんが集まるICUは、多種多様な生命維持管理装置が稼働する、まさに医療機器の最前線です。

臨床工学技士は、ICUの「機器の番人」として、人工呼吸器はもちろん、急性腎不全の患者さんに行う持続的血液濾過透析(CHDF)、重症の心不全や呼吸不全の患者さんに用いる補助循環装置(ECMOやIABP)など、あらゆる高度医療機器を集中管理し、その安全な運用に責任を持ちます。

心血管カテーテル業務(カテ室)

心筋梗塞や狭心症の検査・治療(カテーテル治療)が行われる心血管カテーテル室(カテ室)も、臨床工学技士の重要な職場です。

ここでは、心臓内の電気信号や血圧などをリアルタイムで記録・解析するポリグラフ装置や、カテーテルの先端についた超音波で血管の内部を観察するIVUS(血管内超音波)といった、専門的な装置の操作を担当し、医師の診断と治療をサポートします。

医療機器管理業務

病院内で使用される全ての医療機器が、いつでも安全に、そして正しく使用できる状態にあること。

これは、医療安全の根幹をなす非常に重要なテーマです。

臨床工学技士は、生命維持管理装置だけでなく、病棟で使われる輸液ポンプやシリンジポンプ、心電図モニターといった数多くの機器を、院内で一元的に管理する役割も担います。

保守点検計画を立てて定期点検を行ったり、故障した機器を修理したり、看護師など他のスタッフに対して正しい使い方を指導する研修を行ったりと、病院全体の医療安全を支える要となります。

臨床工学技士になるには?資格取得へのロードマップ

医学と工学の知識を併せ持つ専門家になるためには、どのようなステップを踏む必要があるのでしょうか。

その道のりを具体的に見ていきましょう。

STEP1:高校卒業(特に理系・工学系への興味が重要)

臨床工学技士を目指すためのスタートラインは高校卒業です。

養成校では、医学的な知識はもちろん、電気・電子工学や機械工学といった工学系の学問を深く学びます。

そのため、高校時代に物理や数学、化学といった理系科目の基礎を固めておくことが、その後の学びに大きく影響します。

STEP2:臨床工学技士養成校で学ぶ(3年以上)

高校卒業後は、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定する臨床工学技士の養成校で、3年以上専門的な知識と技術を学ぶ必要があります。

養成校には、大学(4年制)と専門学校(3年制)があります。


大学では、医学と工学の両分野を基礎からじっくりと学び、研究的な視点も養うことができます。

専門学校では、より実践的な技術の習得に特化したカリキュラムで、現場での即戦力を目指します。

また、既に看護師などの医療系資格を持っている方や、工学系の大学を卒業した方が、1年または2年制の専攻科で学び、資格取得を目指すというルートも存在します。

STEP3:臨床工学技士国家試験に合格する

養成校で必要な単位を修得すると、国家試験の受験資格が得られます。

臨床工学技士国家試験は、年に1回、例年3月上旬に実施されます。

医学概論や臨床医学総論といった医学分野から、医用電気電子工学や医用機械工学、生体機能代行装置学といった工学・専門分野まで、非常に幅広い知識が問われます。

近年の合格率は70%~80%台で推移しており、養成校での学びをしっかりと自分のものにすることが合格への鍵となります。

看護・医療業界でご就業中の皆様今の年収、 今の働き方に満足してますか?あなたの理想の職場を
転職のプロが実現

メディともで転職の相談をする

臨床工学技士の主な就職先と働き方

国家資格を取得した臨床工学技士は、その専門性を武器に、多様なフィールドで活躍します。

ここでは、主要な就職先をカテゴリー別に分類し、それぞれの働き方のリアルを詳しく解説します。

病院

臨床工学技士の大多数がキャリアをスタートさせ、そして専門家として成長していく場所が「病院」です。

特に、大学病院や地域の基幹となる総合病院は、最も多様な経験が積める環境と言えます。

働き方の特徴

大病院では、多くの場合「ローテーション制度」が採用されています。

入職後、数年かけて血液浄化(透析)部門、手術室、ICU、心血管カテーテル室、医療機器管理室などを数ヶ月~1年単位で回り、臨床工学技士が関わるほぼ全ての業務を経験します。

これにより、自身の適性を見極めながら、オールラウンドな知識と技術を身につけることができます。

一定の経験を積んだ後は、本人の希望や適性に応じて特定の部署に本配属され、その分野のスペシャリストとしてキャリアを深めていきます。


勤務形態は、24時間体制で医療を提供する病院の機能上、日勤に加えて当直勤務やオンコール待機が必須となります。

夜間に緊急手術が入ったり、病棟の人工呼吸器にトラブルが発生したりした際には、すぐに駆けつけて対応する責任と緊張感が伴います。

キャリアの魅力

最先端の医療機器に触れ、高度で複雑な症例を数多く経験できることは、何物にも代えがたい財産となります。

また、医師や看護師をはじめとする多職種と密に連携する「チーム医療」の最前線を体感できるのも、大病院ならではの魅力です。

教育体制や研修制度も充実しており、キャリアの基盤を築くには最適な環境です。

クリニック

病院に次いで多い就職先が、クリニック、特に「透析クリニック」です。

ここでは、病院とはまた違った働き方とやりがいがあります。

働き方の特徴

透析クリニックでの業務は、血液浄化療法に特化しています。

毎日、多くの透析患者さんの治療を一手に担い、その道の専門家としてのスキルを日々磨き続けることになります。

穿刺(せんし)技術や、患者さん一人ひとりの状態に合わせた透析条件の管理など、高い専門性が求められます。


勤務形態は、多くのクリニックが午前・午後のクールに加えて、仕事帰りの患者さんに対応するための夜間透析を行っているクリニックもあります。

そのため、日勤だけでなく準夜勤(夕方から深夜までの勤務)を含むシフト制となるのが一般的です。

病院のような深夜の当直はほとんどなく、日曜日は休診の施設が多いため、比較的規則正しい生活リズムを保ちやすいのが大きなメリットです。

キャリアの魅力

透析治療は、患者さんにとって生涯続くものです。

そのため、特定の患者さんと何年、何十年という長いスパンで関わり、その生活と人生に深く寄り添うことができます。

日々のコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、頼りにされる存在となれることは、大きなやりがいにつながります。

医療機器メーカー

臨床で培った知識と経験は、医療機器メーカーという新たなフィールドで活かすことも可能です。

企業の社員として、医療の発展に違った角度から貢献します。

働き方の特徴

代表的な職種が「アプリケーションスペシャリスト」です。

自社が開発・販売する人工呼吸器や透析装置、人工心肺装置といった高度な医療機器を導入した病院へ出向き、現場の医師や看護師、臨床工学技士に対して、正しい操作方法や効果的な使用法を指導・レクチャーします。

また、学会での製品デモンストレーションや、新製品開発のための情報収集なども行います。


その他、医療機関に製品を販売する「営業職」や、製品の品質を管理する「品質保証」、新たな機器を開発する「研究開発職」など、多様なキャリアパスが存在します。


勤務形態は、基本的に土日祝休みのカレンダー通りの勤務ですが、アプリケーションスペシャリストや営業職は、全国の医療機関への出張が多く、非常にアクティブな働き方となります。

キャリアの魅力

臨床現場の一職員という立場から、業界全体を俯瞰する視点が得られます。

最先端の技術情報にいち早く触れることができ、自社製品を通じて、より多くの患者さんの治療に貢献しているというスケールの大きなやりがいを感じられます。

給与水準も、一般的に病院勤務より高い傾向にあります。

臨床工学技士の給料・年収とキャリアアップ戦略

キャリアを考える上で、収入面や専門性を高める道筋は重要な要素です。

平均年収の実態

各種統計データを参考にすると、臨床工学技士の平均年収は400万円~500万円程度とされています。

ただし、これはあくまで平均値であり、年齢や経験、勤務先の規模、そして各種手当によって大きく変動します。

特に、当直やオンコール、手術室での業務などに対する手当は、収入に大きく影響します。

専門性を高めるキャリアアップ(認定資格)

臨床工学技士は、特定の分野の専門家として、自身の価値を高めていくことができます。

その証明となるのが、関連学会が認定する各種の「専門認定士」資格です。


例えば、透析の専門家を目指すなら「透析技術認定士」、呼吸器のプロフェッショナルになるなら「3学会合同呼吸療法認定士」、人工心肺の操作技術を極めるなら「体外循環技術認定士」など、目指すキャリアに応じた資格があります。

これらの資格を取得することは、スキルアップはもちろん、資格手当による収入増や、より良い条件の職場への転職にも繋がります。

看護・医療業界でご就業中の皆様今の年収、 今の働き方に満足してますか?あなたの理想の職場を
転職のプロが実現

メディともで転職の相談をする

臨床工学技士の「やりがい」と「大変さ」

いのちと機械の間に立つ臨床工学技士の仕事には、他では味わえない大きな喜びと、それに伴う厳しい責任があります。

やりがい・魅力

最大のやりがいは、自分の操作する機械によって、目の前の患者さんの命が直接的に救われる、あるいは維持されるという、ダイレクトな貢献実感です。

手術室で止まっていた心臓が再び動き出した瞬間や、人工呼吸器によって苦しそうな呼吸が楽になった様子を見た時の感動は、何物にも代えがたいものです。

また、医学と工学という2つの専門分野を探求し続けられる知的な面白さや、チーム医療の中で「機械のことはCEに聞け」と、医師や看護師から絶対的な信頼を寄せられる専門家としての誇りも、この仕事の大きな魅力です。

大変さ・厳しさ

その一方で、生命に直結する機器を扱うがゆえに、一つの操作ミスも許されないという、極度のプレッシャーと常に隣り合わせです。

緊急手術や患者さんの急変時には、深夜でも休日でも呼び出され、冷静かつ迅速な対応が求められます。

また、医療機器の技術は日進月歩で進化するため、新しい知識や技術を生涯にわたって学び続ける不断の努力も不可欠です。

臨床工学技士の将来性【医療の高度化と共に価値が高まる】

技術革新が激しい医療の世界において、臨床工学技士の将来性は非常に明るいと言えます。

医療は今後、手術支援ロボットや再生医療、AIを活用した治療機器など、ますます高度化・複雑化していきます。

それに伴い、これらの新しい医療機器を安全に、そして効果的に管理・運用できる専門家である臨床工学技士の需要は、減るどころかますます高まっていくでしょう。

また、医師の働き方改革に伴う「タスクシフト/シェア」の流れの中で、これまで医師が行っていた業務の一部、例えば静脈路への穿刺などを臨床工学技士が担えるようになるなど、法的な業務範囲の拡大も進んでいます。

さらに、在宅で人工呼吸器や透析を行う患者さんが増える中で、その機器の管理やサポートを行うという、在宅医療への展開も期待されています。

臨床工学技士は、テクノロジーの進化と共に活躍の場が広がり続ける、非常に将来性の高い専門職なのです。

看護・医療業界でご就業中の皆様今の年収、 今の働き方に満足してますか?あなたの理想の職場を
転職のプロが実現

メディともで転職の相談をする

まとめ

今回は、臨床工学技士という仕事について、その役割から多様な働き方、未来の可能性までを詳しく解説してきました。

臨床工学技士は、医学と工学の知識を併せ持ち、高度な生命維持管理装置を駆使して患者さんの命を救う「いのちのエンジニア」です。

安定した国家資格でありながら、常に最先端の技術に触れ、多様な専門分野で活躍できる、ダイナミックでやりがいの大きな仕事です。

あなたも、テクノロジーを自らの武器として、人の命を支えるキャリアを目指してみませんか?

まずは、臨床工学技士が実際にどのような現場で活躍しているのか、求人情報をチェックしてみることから始めてみましょう。